思考志向

『「無限の苦しみ」と「有限の限りなく大きな苦しみ」』という記事を読んでみてください。

幸福税と美人税・イケメン税と遺伝子税

 幸福税という考え方がある。幸福な人から税金をとって、それを不幸な人に分配するというものだ。幸福度合いに従って多くお金を払い、不幸度合いに従って多くお金をもらえる。もちろん、人の幸福度合いを測ることはできないが、ここでは実現可能かどうかは考えないことする。幸福税の考え方は幸福の平等を目指している。今苦しんでいる人は、お金を得ることでより苦しみを減らせる。余裕のある人は、その分お金を払う。幸福の平等というのは、極端に苦しんでいる人を減らすという意味で重要なテーマだ。幸福税は、何かしらの政策によって間接的に幸福の平等を目指すというより、直接的に平等を目指そうとするものだ。

 

 経済的平等を求める感覚は、意識しないところで幸福の平等を求める感覚がもとになっている場合が多い。貧困を是正しようとする考え方は、究極のところ、貧困層の極端な不幸を減らすことを目的としたものだ。極端な不幸を減らそうという考えはごく自然なことだろう。そういう意味で、幸福の平等を目指す幸福税の考えがあってもおかしくはない。

 

 ただ、幸福税の考えには少なくとも一つ大きな欠点がある。それは、幸福は本来推奨されることのはずなのに、幸福であればあるほど損をしてしまうということだ。幸福であればお金を払い、不幸であればお金をもらえるので、幸福になろうとするモチベーションが下がってしまう。これは、経済的平等を目指す諸政策(累進課税生活保護等)において課題にされていることと同じ問題だ。

 

 一方で、美人税・イケメン税には、この「逆方向の働き」がない。美人でイケメンなほど多くの税金が課せられ、不細工であるほどお金がもらえる。一般的には、美人・イケメンであるほど世間から優遇され幸福になり、不細工なほど不幸になりやすい。(と言われている。)顔の造形は基本的に、遺伝子によってあらかじめ決められたもので、税金を逃れるために不細工になることはできない。

 

 美人税・イケメン税を一般化させると遺伝子税という考え方にたどり着く。幸福な生活を送るのに有利に働くような遺伝子を持つ人に多く課税し、そうした遺伝子を持たない人には課税額を減らす。例えば、メンタルが強くなる遺伝子、高収入につながるような遺伝子、病気になりにくい遺伝子などだ。遺伝的にあらかじめ定まったものだから、メンタルが弱いこと、低収入、不摂生をして健康に努めないことを推奨することには全くつながらない。